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「頼れる瀬谷のお医者さん」シリーズ第9弾
<消化器内科医とがん診療連携拠点病院との対談>|
横浜市瀬谷区の田川クリニック

Interview

「神奈川県立がんセンター」消化器内科(内視鏡)(以下、内視鏡科)は、がん専門病院として高度な内視鏡技術と地域のクリニックとの連携で、がんの早期診断・治療をリード。「当院では、外科や病理診断科を含めた多くの診療科と連携し、患者さんにとって最適となる治療を追究しています」と笑顔で語るのは、内視鏡科部長の滝沢耕平先生。「田川クリニック」の田川徹平先生は、滝沢先生に大きな信頼を寄せ、かかりつけ医として内視鏡診断に意欲をのぞかせます。両者が語る、地域医療と先端医療をつなぐ病診連携のメリットと内視鏡医療への熱い想いを届けします。
(取材日:2025年6月25日)

  • 田川先生田川クリニック
    副院長 田川徹平
  • 滝沢先生神奈川県立がんセンター
    滝沢耕平先生

高度な内視鏡治療で、多様ながんに対応

今回の対談のきっかけについて教えてください。

田川クリニックは内科と消化器内科、内視鏡をやっていますが、高度な検査や治療が必要な場合は専門施設にお願いする必要があります。「神奈川県立がんセンター(以下、がんセンター)」は患者さんも安心できる病院ですが、普段は紹介状でしかやり取りがなく、直接お話する機会がありませんでした。また、「がんセンター」と聞くと手術を受けなければならないと身構えてしまう患者さんもいるので、様々な治療選択肢があることや、幅広い疾患を診ていることを知ってもらい、受診のハードルを下げたいと思ったのがきっかけです。

「神奈川県立がんセンター」の特徴を役割について教えてください。

がんセンターは神奈川県で唯一の都道府県がん診療連携拠点病院として、県内のがん患者さんの「最後の砦」です。全身のがんの診断、治療に特化し、クリニックや他の病院から紹介された難易度の高い病変や診断、治療に苦慮するケースなどを受け入れています。私が所属する内視鏡科では、内視鏡診断・治療を行い、がんの大きさや部位による高難度症例や、他院で治療を断念された症例にも対応。内視鏡だけでなく、手術、薬物治療、重粒子線治療、ゲノム医療に基づく個別化治療もシームレスに提供できるのが強みです。
消化管の病変は早ければ早いほど治療の選択肢が多く、治療の侵襲も少ないので、できるだけ早く診断して専門施設に紹介することが重要です。治療が必要な患者さんを早い段階で専門の医療機関につなげるのがクリニックの役割なので、情報発信としてWEB 記事や動画の投稿、SNSの活用などにも力を入れています。

「消化器腫瘍センター」について、詳しくお聞かせください。

以前はがんの診断がついていないとがんセンターには受診できないというイメージがあったかもしれませんが、2024年4月に消化器内科3科(消化管内科、内視鏡科、肝胆膵内科)、消化器外科3科(胃食道外科、大腸外科、肝胆膵外科)による「消化器腫瘍センター」を立ち上げました。何科に紹介すべきか迷う場合は消化器腫瘍センターにご紹介ください。もちろん、がんが疑われる段階から対応します。紹介患者さんはお断りせず、1週間以内に受診できるよう迅速に対応します。
私も十二指腸の病変などは生検せずに「ごめんなさい、もしかしたら治療摘除にならないかもしれないけど診てください」と専門の先生に検査をお願いしてしまうこともあります。診断がつかないまま様子をみるより、がんセンターでしっかり検査してもらい問題ないと言われた上で経過をみた方が、患者さんと医師の安心感が大きく向上しますね。これはがんセンターのように信頼できる医療機関がバックにいてくれるからできることで、すぐ近くにこんな素晴らしい医療機関があるのは、本当にありがたいことだと思います。
十二指腸は胃の奥にあるので胃カメラの操作性が悪いだけでなく、合併症も多く、壁に穴が開きやすいので内視鏡治療が1番難しい場所。なにかあった時のために、治療は肝胆膵内科や外科のバックアップがしっかりしている病院に集約するべきだと思います。当院では、そのような症例にも積極的に取り組んでいます。さらに十二指腸や食道などの手技的に難しい症例に関しては、内視鏡室ではなく、手術室にて全身麻酔下で治療を行い、より安全な治療を心がけています。
胃カメラはやっているけれど大腸カメラはやっていないというクリニックからの依頼も受けていただけるのでしょうか?
はい、便潜血陽性などの有症状患者様は、大腸カメラの検査のみの依頼もお受けしています。また、同じ消化器内科の肝胆膵内科でもいろいろな検査を行っているので、何科に紹介したらいいのかわからないという時でもお気軽にご相談ください。基本的にご紹介いただいた患者さんはお断りしない方針ですので、こんな症例はがんセンターでは診てもらえないだろうと思わず、遠慮なくご紹介いただければと思います。紹介状をご用意の上、患者様から直接もしくはクリニックなどの医療機関から連絡をいただければ、1週間以内に受診できるよう予約の手配をします。
1週間以内に受診出来るのは嬉しいですね。予約をとってから受診するまでの期間が長いと患者様は不安を募らせてしまうことが多いので、日ごろからできるだけ早く患者様とご家族の不安を取り除けるよう心がけているかかりつけ医としてもありがたいです。

【消化器腫瘍センター連絡先】

がん相談支援センター 初診予約(受付時間 平日8:30~17:00)
電話 045-520-2210(患者からの受診申込専用回線)
電話 045-520-2204(医療機関からの受診申込専用回線)

負担が少なく、回復が早い!内視鏡治療の強み

「神奈川県立がんセンター」の内視鏡科では最先端の内視鏡を使って精度の高い検査や治療を行っているそうですね。

内視鏡機器に関しては、現在国内で使用可能な中でほぼ最新のもの使用しています。特性が異なる2つのメーカーのものを導入し、最新のシステムを用いて上部消化管、下部消化管、肝胆膵領域の内視鏡診断と治療を行っています。日本消化器内視鏡学会の指導医、専門医を中心に、消化器内視鏡技師の資格を取得した看護師や臨床検査技師など経験豊富なスタッフが患者さんやご家族の気持ちに寄り添いながら、安心して診療を受けられる環境を整えています。
私が昭和大学の医局時代に言われて以来、ずっと大事にしているのが「初めて受けた内視鏡でつらい思いをしてしまうと、その患者さんは二度と内視鏡検査を受けようとしなくなってしまうから、絶対につらい思いをさせてはいけない」という言葉です。とにかく患者さんにつらい思いをさせないよう、リスクマネジメントをしっかりして鎮静剤を使い、うとうとしている間に検査を終わらせるようにしています。「内視鏡検査ってこんなに楽に受けられるんだ」とわかっていただければ次もまた検査を受けていただけるし、継続して検査を受けていただくことが病気の早期発見につながると思っています。
症状が出る前の初期のがんというのはクリニックさんで見つけていただくことがほとんどです。できるだけ早い段階で見つけていただいて私どもへご紹介いただくというのが理想です。ごく初期の消化器がん、特に胃がんの粘膜内に留まっている病変であれば、内視鏡での切除でも完全に治すことが期待できます。

内視鏡手術でとれるがんの種類や大きさにについて教えてください。

内視鏡科で扱うのは、口から入ってお尻まで続く消化管、つまり食道、胃、十二指腸、大腸などすべての消化管です。がんのステージ(進行度)で重要なのはがんの大きさ(横への広がり)ではなく、根の深さ(深達度)です。浅いまま横に広がっている病変に関しては、今はESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)という高周波ナイフで病変を切開・剥離する方法がありますので、技術的には10cmを超えるような病変でも内視鏡で切除することができます。
病変の大きさだけではなく、根の深さなどその他の要因も含めて検討し、適切な治療を選んでいくことになるのですね。

内視鏡手術だけの場合、入院期間はどれくらいになりますか?

当院では胃のESDの場合、入院期間を6〜7日に設定しています。例えば、月曜日に入院してその日の午後に内視鏡切除をしたとしたら、火曜日から水を飲み始め、水曜日から食事をとり始めていただき、土曜日〜日曜日に退院という流れになります。
実際に手術を受けた患者さんが痛みを感じたり、つらい思いをしたりすることはあるのでしょうか?
胃のESDの場合、全身麻酔ではありませんが、注射で眠っていただきますので術中の意識はまずありません。切除後、病変の大きさに応じて胃の中に3~4cmくらいの潰瘍(傷)ができるので、傷が新しいうちはちょっと胃がシクシクする感じがする方もいれば、まったく何も感じることなく「本当に手術したんですか?」と驚かれる方もいますし、少し痛みを感じる場合もあります。ただ症状があったとしても最初の数日間だけのことがほとんどです。
内視鏡手術で済む消化器がんなら数日の入院で完治が見込めるだけでなく、日常生活に殆ど影響を及ぼすことなく復帰できるんですね。私が1番避けたいのは、手術といわれた患者さんから「半年考えます」「来年の検査で大きくなっていたら、手術を受けます」と言われてしまうこと。今すぐ治療を受ければ治るのだから、治療を勧められたら先延ばしにしないでほしいですね。

退院後の経過について教えてください。

当院では、運動や食事制限は約1カ月で徐々に解除となるケースが多いです。2か月後に胃カメラで傷が完全に閉じて治っていることを確認できたら、運動や食事の制限は完全になくなり、これまで通りの生活をしていただくよう説明しています。もちろん内視鏡治療なら、外から見える場所に傷跡が残ることもありません。退院してすぐ仕事に復帰される方もいらっしゃいます。内視鏡で切除した病変を顕微鏡で調べる検査に出し、約3週間後に結果がわかります。その結果で内視鏡治療で終了か、追加外科切除が必要かが決まります。内視鏡切除のみで治癒切除を判断されれば、その後は年に1度の胃カメラで経過観察になることが多く、この段階でもともと通っていたクリニックで引き続き経過を診ていただくようにしています。

それぞれの立場で、最適な医療のために最善を尽くす

「がん」「がんセンター」という言葉に患者ができるだけショックを受けないよう、どのようなことを心がけていますか?

がんの告知を受けて全くショックを受けない方はいないと思います。大きな進行がんではなく、2~3週間の余裕のあるような場合は、ご家族にも来ていただいてから本格的な告知をするようにしています。帰り道に患者さんが一人にならないようにするためと、生検の結果を受け、これからどのような治療を受けるか大事なことを相談できるご家族が一緒の方がいいと思うからです。最善を尽くすためには、少しでも早く治療を開始した方が患者さんのためになるからです。
最近は当院にご紹介いただく段階で、クリニックさんからしっかりがんであることの説明を受けた上で受診される患者さんが殆どなので、大きく驚かれる方はいらっしゃらないです。早期の消化器がんは基本的には内視鏡治療、ないしは手術をすれば治る病気だということはしっかり説明させていただいています。当院の内視鏡室のモットーは、「患者ファースト」と「仕事は楽しく」です。がんと診断され、なにかとふさぎがちな患者さんの気持ちが少しでも明るくなるよう、病院にいる間は、みんな笑顔でいようと常々スタッフにも伝えています。また、診断直後から疼痛管理や心理的サポートも提供しておりますし、がん相談支援センターでは臨床心理士や医療ソーシャルワーカーがご家族の不安や介護負担を軽減できるよう包括的支援を提供していますので、不安なことがあれば些細なことでもご相談ください。

クリニックとがんセンターの病診連携は、がん患者はもちろん、家族にも大きな安心をもたらしそうですね。

同じ内視鏡でも、クリニックの内視鏡は診断、がんセンターの内視鏡は治療がメインです。できるだけ早い段階で消化器がんをみつけてがんセンターにつなぐことができれば、瀬谷区で胃がんや大腸がんで亡くなる方をゼロにすることができるかもしれないですよね。しかもがんセンターはあらゆるがんに対して高度な医療を提供していただけるので、これはおかしいと思ったら、私は当院でCTを撮らず、すぐがんセンターにお願いするようにしています。その方が患者さんの被ばくが少なくて済むし、がんだった場合、最適な治療に最短でおつなぎすることができますからね。
がんセンターはがん専門病院として、早期のがんから緩和ケアまで、幅広い医療を提供しています。それぞれの治療ごとにメリットデメリットがあるので、キャンサーボードと呼ばれる多診療科によるカンファレンスで患者さん一人ひとりにとって最適となる治療を相談・検討しています。患者さんにとって1番身近なかかりつけ医であるクリニックさんに窓口になっていただき、がんセンターで治療を受けたあと、再びかかりつけ医のもとで経過観察を受けていただくことで、がんセンターへの通院負担もかなり軽減できると思います。両者をうまく活用して、がんセンターでの治療と地域クリニックでの身近なサポートを安心して受けていただけたら嬉しいですね。
がんセンターは設備もしっかりしているし、優秀な先生方がそろっているので安心して患者さんを紹介できます。それだけでなく、院内が本当に明るくてきれいなので、患者さんもストレスなく安心して治療を受けていただけると思います。実際、戻って来られた患者さんの満足度も高いですね。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

我々内視鏡科は昨年新設したばかりですが、地元のクリニックの先生方に安心して患者さんをお任せいただけるよう、地域に根ざした診療を目指してがんばっていきたいと思っています。そのためにも、まずはお互いに顔を合わせることが大切と考え、定期的にセミナーや懇親勉強会などを開催しています。時間があれば地元のクリニックさんにご挨拶に伺わせていただきたいと考えていておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
私もがんセンターの会に参加して、はじめて滝沢先生とお会いできたんです。それまでは紹介状を通じてのみの関係でしたが、顔見知りになってからはぐっと相談しやすくなったので、一度顔を合わせるということは本当に大切だと思います。早期がんであろうと進行がんであろうと、判断に迷ったとき、近くに精度の高い高水準の医療を提供してくれる医療機関があるのは、患者さんにとって本当にラッキーなことだと思います。これからも患者さんのために、しっかり連携しながら有効活用させていただきたいと思います。

対談を終えて

がんセンターとクリニックと、立場こそ異なるけれど、「どんな患者さんでも断らない」という共通のポリシーのもと、地域に根ざした診療で多くの信頼を集めている滝沢先生と田川先生。同じ内視鏡を扱う田川先生から見ても、滝沢先生はこれ以上ないくらい信頼して患者を任せられる内視鏡のスペシャリストとのこと。そんなすごいスキルを持ちながらも、明るい笑顔で患者ファーストを貫く滝沢先生は、患者だけでなく病院スタッフからも「滝沢先生のおかげで素晴らしい内視鏡科が立ち上がりました」と、信頼の声が寄せられていました。これまでは、がんセンターはがんになったらかかる病院と思っていましたが、がんの疑いがある段階から受診できるとわかり、大きな収穫でした。この先、もし自分や家族ががんと告知されたとしても、迷わず、恐れずがんセンターを受診したいと思います。

田川先生と滝沢先生

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