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「頼れる瀬谷のお医者さん」シリーズ第8弾
<消化器内科医とがん診療連携拠点病院との対談>|
横浜市瀬谷区の田川クリニック

Interview

がんの告知に少なからずショックを受けるのはみな同じ。では、その先にどのような治療が待っているのでしょう。大和市を中心とする県央エリアで唯一の「がん診療連携拠点病院」として地域のがん診療に貢献する「大和市立病院」消化器内科の栁田直毅先生と、消化器内科のがんの早期発見に真摯に取り組む「田川クリニック」の副院長・田川徹平。内視鏡に精通する2人が、総合病院とクリニック、それぞれの立場で主治医としての役割や患者への熱い思いをじっくり語っていただきました。
(取材日:2024年5月22日)

  • 田川先生田川クリニック
    副院長 田川徹平
  • 栁田先生大和市立病院
    栁田直毅先生

先進の内視鏡を用いたがん治療や、地域のクリニックとの連携医療の様子などをお聞きしながら、地域の医療機関同士が協力してがん患者をサポートしていくため、「医療」と「地域」連携の中心となる

医師同士のコミュニケーションを深め、スムーズな病診連携をめざす

まずは今回の対談のきっかけについて教えてください。

そもそもこの対談をはじめたきっかけが、例えば糖尿病の患者さんに眼科を受診するよう言っても、「そのうち行きます」と言うばかりでなかなか行ってもらえないという現実があって、じゃあ私が眼科の先生とお話させていただいて、その様子をホームページや待合室で紹介したら、受診のハードルが下がるのでは?と思ったことなんです。実際、私と眼科の先生が話している写真を見た患者さんに、「伊勢ノ海先生にしっかり診てもらってね」と言うと話も通じやすいし、私も先生の診療内容やお人柄などがよくわかっているので自然と説得力も増すし、患者さんにも「それなら行ってみようか」と思っていただきやすいんですよね。
たしかに受診のハードルは下がりますね。
今、当院にも大和や綾瀬から来られる患者さんが増えてきていて、検査の結果、大きい病院を紹介しましょうとなった時、治療で通うにしろ、入院するにしろ、ご自宅に近い病院の方がいいですよね。じゃあ、「大和市立病院」を紹介しましょうとなった時、紹介先の栁田先生がどんな先生なのか、そこでどんな検査や治療が受けられるのかがわかれば、私も紹介しやすいし、患者さんにも安心して「大和市立病院」へ行っていただけるだろうなと思い、今回の対談をお願いしました。

お二人が初めてお会いしたのは、昨年の秋だそうですね。

昨年の秋、当院に患者さんをご紹介いただいているクリニックの中から15件ほどご挨拶に伺わせていただきました。その中の一件が「田川クリニック」で、その時、はじめて田川先生にお会いしたのですが、遅い時間にも関わらず大勢の患者さんが来られていて、医師は田川先生お一人なのにテキパキ対応されていて、地域で頼られているすごい先生なんだなぁと驚きました。
それまでは私も栁田先生を紹介状でお名前を拝見するくらいしか知らなかったのですが、実際にお会いしてみてすごく人当たりの良い、話しやすい先生だったので、これはぜひ次回の対談をお願いするしかないなと(笑)。
対談のお話をいただいた時は正直とても驚きましたが、そもそも病診連携を進める上で医師同士のコミュニケーションは非常に大切だと思ってご挨拶に伺ったくらいなので、断るという選択肢はありませんでした。こんな風にお話させていただいた先生なら、患者さんに紹介する時、「僕の知り合いの先生なので」と、自信をもって紹介できるのでありがたいですね。

患者と接する時、どのようなことを大切にされていますか?

患者さんは不安に思って来てくださっているので、病気のことはもちろん、治療費や仕事、介護のことなど、個人的に気になるであろうことにも配慮しながら、少しでも不安を取り除けるような対応を心がけています。
うちは父が院長をしていた頃から家族で通ってくださっている患者さんも多いので、この患者さんは独り暮らしだとか、この患者さんのお世話をしているのはお嫁さんだとか、ある程度生活背景がわかっています。病気の状態だけでなく、患者さんの生活背景も考慮し、同じ病気でも、この方は入院した方がいいだろうとか、この方は様子見でも大丈夫だろうとか総合的に考え、患者さんにとって最善となる選択肢を提案させていただくよう心がけていますし、可能な限りそういった情報も提供させていただくようにしています。

先端の内視鏡による「消化器がん」の治療に注力

「大和市立病院」の消化器内科の特徴を教えてください。

大学病院など3次医療を提供している大きな病院では、肝臓内科だとか大腸内科だとか、専門が細かく分かれていますが、当院の消化器内科では、消化管(食道・胃・十二指腸・大腸)と、肝臓・胆のう・胆管・すい臓などの消化器疾患について幅広く対応しています。具体的には早期の食道がん、胃がん、大腸がんを含む大腸ポリープ、食道・胃・大腸及びすい臓・胆道の進行がん、肝細胞がん、ヘリコバクター、ピロリ菌、消化管出血、炎症性腸疾患、ウイルス性肝炎、急性胆のう炎・胆管炎・閉塞性黄疸などに対応しており、中でも消化器がんの診療に力を入れています。
うちには消化器内科の患者さんだけでなく、喘息の患者さんから胸の痛みを訴える不整脈の疑いのある患者さんなど、幅広い症状を訴える患者さんが来られるので、「大和市立病院」のようにさまざまな科の患者さんを幅広く受け入れていただけるバックアップがあると、町の開業医としてとても心強いですね。
地域の基幹病院として、「専門外だから」と安易にお断りするようなことはできません。場合によっては他科の先生にも診ていただきながら、必要に応じて近隣の大学病院におつなぎすることもあります。糖尿病だけでなく心疾患のある方もいるし、腹痛といっても消化器内科だけでなく、泌尿器科から婦人科までさまざまな可能性があるので、大和市で1番大きな病院ならではの総合的な診療を提供させていただいています。

検査体制もかなり充実していますね。

CT、MRI、腹部超音波検査、胆膵内視鏡、胃カメラ、大腸カメラなど、検査技師を含め、検査体制はかなり充実していると思います。消化器内科では今年の4月から常勤医が増えて7人体制になったので、内視鏡検査なら比較的予約もとりやすくなりましたので、お急ぎの患者さんなど気軽にご紹介いただければと思います。逆に、外来もやって、胃カメラだけでなく大腸カメラまで1人で対応されている田川先生は本当にすごいと思います。
たしかに大腸カメラは時間もかかるので、やっていないクリニックも多いですね。私が医局で最初に教わったのが「初めて受けた内視鏡検査がつらかったら、その人は2度と検査を受けないよ」ということでした。うちでは9割の患者さんが鎮静剤を使って、痛みを感じることなくうとうとしている間に検査を受けています。検査がつらくなければ、次もまた受けようと思っていただけるし、「今の大腸カメラはつらくないですよ」と情報発信することで、次の患者さんにも安心して検査を受けに来ていただける流れを作りたいなと思ってるんです。
大腸カメラはどんなに上手い先生がやっても、カメラが入っていくという事実は変わらないので、それなりの痛みはありますよね。当院でも鎮静剤を使って苦痛の少ない検査を提供しています。

先端の設備を駆使した内視鏡診療について教えてください。 

消化器がんの診療においては内視鏡が非常に重要ですので、当院では5年ごとにリースを更新し、先端の内視鏡を駆使した精度の高い検査を提供しています。検査はもちろん、内視鏡による治療も積極的に行っていて、粘膜表面に拡がっている早期の食道がんや胃がん、大腸がん(大腸ポリープ)などを輪っかに引っかけて採るEMR(内視鏡的粘膜切除)をはじめ、大きな病変に対応可能なESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)をできる医師が4人在籍しているので、毎年かなりの件数をこなせるのも当院ならではの強みだと思います。
お腹を切る外科手術と比べて内視鏡なら体への負担も少ないし、早期の病変であれば治療成績もオペと変わりません。胃がんや大腸がんが見つかっても、早期だったら「内視鏡でとってもらえるから、お腹に傷跡も残りません。大和市立病院だったらちゃんと診てもらえるので安心ですよ」と言えるので、患者さんも過剰な心配をしなくて済みますね。
EMRなら2~4日、ESDでも初期のがんなら1週間くらいで退院できるので、たしかに驚かれる患者さんもいらっしゃいます。内視鏡治療は、口や肛門から挿入した内視鏡でがんのみを切除するので、入院期間が短いだけでなく、退院後もこれまで通りの生活ができるという点も大きなメリットですね。内視鏡で切除できないがんは、外科手術や抗がん剤を用いた化学療法、放射線治療など、幅広い治療を提供しています。また、主科は消化器内科でも併科で緩和ケア内科の先生に入っていただいたり、外来で緩和ケア内科の先生に対応していただくなど、患者さんにとって最善の治療となるよう柔軟に対応させていただいています。
内視鏡治療の次のステップに行ったとき、緩和が入ると患者さんの負担がかなり軽減されますよね。特に外来から緩和の先生にも診てもらえるのは心強いですね。

「2人の主治医」による医療連携で、がん患者に手厚いケアを

「がん診療連携拠点病院」としての役割も担っているそうですね。

「大和市立病院」は、県央地区で唯一のがん診療連携拠点病院として、2012年より多臓器に渡って、幅広くがんの治療に力を入れてきました。具体的には、専門的ながん診療の提供だけでなく、地域の医療機関とのがん治療の連携や、がん患者の方とそのご家族への相談や情報提供など、がん診療の拠点病院として多角的な医療サービスを提供しています。
クリニックで内視鏡をやっている立場からすると、僕らの仕事は病気を見つけて、適切な医療につなげること。専門施設のキャパシティが飽和しないよう、本当に専門的な検査や治療が必要な人だけを専門施設に送ること。一人でも多くの方を早い段階でがんを見つけて専門施設に送ることができれば、将来的にはこのエリアで胃がん、大腸がんで亡くなる人は限りなくゼロに近づくんじゃないかなと思っています。そのためには地域の方々への情報発信もまだまだ必要ですね。
田川先生がおっしゃる通り、どうしても受け入れられる枠には限界があるので、病院での治療が終わって状態が落ち着いたらご自宅の近くのクリニックにお願いして、何かあったらまた病院にご紹介いただくという連携は大事ですね。消化器内科でも、胃がん内視鏡治療については、がん地域連携クリティカルパスを適用し、近隣のクリニックとの病診連携を深めていきたいと考えています。
クリティカルパスというのは新しい制度なので聞き慣れない言葉かもしれませんが、要はかかりつけ医と高度ながん診療を行う大きな病院の担当医が、患者さんの検査結果や治療経過などを共有しながら、それぞれが主治医として診療にあたる病診連携のことです。

初期なら根治が望める消化菅がんについて、早期発見のためのアドバイスをお願いします。

うちで進行がんが見つかるのは飛び込みの患者さんばかりです。定期的に通ってくださっている患者さんは、少しでも変だなと思った時点で検査できるので、もしがんが見つかっても早期治療でとれることが多いです。消化器がんの中でも、臓器の一部を切除することなく全部残せるのは早期の消化管(口から肛門までの食物の通り道。口、咽頭、食道、胃、小腸、大腸など)がんだけ。ぜひ、早期発見できるよう検診を受けてほしいですね。
たしかに進行がんの状態だと、根治は厳しいというケースもあるので、定期健診をきちんと受けて、早期がんの状態でご紹介いただけるのがベストですね。
痔のある人は出血に慣れてしまっているからか、大腸がんの見落としがすごく多いですね。それとピロリ菌に感染したことのある方。除菌しても発がん率は普通の3倍くらいあります。症状が出てからではかなり進行してしまっている可能性が高いので、自覚症状がなくても、定期的に内視鏡検査を受けていただきたいですね。
女性の場合は生理があると思うのですが、おかしいなと思ったら生理中でも全然かまわないので、気軽に受診してくださいね。
後悔しないためなら、取り越し苦労でいいと思うんです。10回検査受けて、9回はなんともなくても、10回目に何かみつかるかもしれないじゃないですか。それを見落としたくないというのが、我々の切実な思いです。今はスマホ1つでいろんな情報にアクセスできるので、どのクリニックにかかったらいいかわからないという方も多いと思います。そんな方は、健康診断を利用して気になる医療機関を受診してみるのもいいかもしれません。情報過多の時代ですが、クチコミだけで判断せず、実際に会ってみて、相性の合うクリニックを見つけていただければと思います。
生涯2人に1人はがんになる時代です。年齢が上がれば上がるほどそのリスクも上がるので、かかりつけ医で定期的に検査を受けてほしいですね。また、入院治療が終わった患者さんは定期的に検査を受けていただくわけですが、それはご近所の頼れるかかりつけの先生にぜひお願いしたいと思いますし、去年「田川クリニック」にご挨拶に来て、使っている内視鏡なども見せていただき、田川先生への信頼感がぐっと増しました。多くの患者さんに頼られている田川先生ですが、病院の立場からも頼れる町のお医者さんの存在は大きいですね。

最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

7月からEUS(超音波内視鏡)が入る予定です。超音波装置を伴った内視鏡で消化管の中から超音波検査ができるようになるので、早期発見が非常に難しいとされる膵臓がんの早期発見に役立てていきたいですね。また、前立腺がん、直腸がん、子宮体がん、子宮筋腫などの手術で、緻密な手術操作が可能となるロボット手術の導入も控えておりますので、今後も安全で質の高い医療を提供していきたいですね。消化器内科では、消化器疾患に幅広く対応しておりますし、特にがんの治療に力を入れて取り組んでいます。今後も県央エリアの基幹病院としてみなさまのお役に立てればと思っておりますので、何かあった時はお気軽にご相談ください。
当院も父の代からの「どんな患者さんでも断らない」というポリシーに基づき、内視鏡クリニックではなく、内科クリニックとして幅広い患者さんに対応しています。それこそ、消化器内科だけでなく、循環器科や婦人科、整形外科までいろんな患者さんが来られるわけですが、それができるのは「大和市立病院」のように幅広く受け入れてくれるバックアップがあるおかげです。瀬谷と大和ではご近所というには少し離れているかもしれませんが、大和からの患者さんも増えてきているので、より広いエリアで患者さんを一緒に支えていけるというのは、大変心強いですね。こうして顔もつながったし、これまで以上にどうぞよろしくお願いいたします。

取材を終えて

最近、身の回りでも、世代を問わずがんの治療を受けた人が増えてきています。それだけがんが身近な病気になってきたのだと思いますが、早期の消化管がんなら、4~7日程度の入院で根治が望めると聞き、驚きました。内視鏡治療なら、お腹に傷跡も残らないどころか、退院後は比較的すぐに日常生活に戻れるとのこと。低侵襲の治療でがんを治すためにも、気になることがあった時だけでなく、定期的に検査してもらうかかりつけ医をもつことの大切さが身に沁みました。

田川先生と栁田先生

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