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「頼れる瀬谷のお医者さん」シリーズ第6弾
<消化器内科医と皮膚科医による対談>|
横浜市瀬谷区の田川クリニック

Interview

大学病院ではリウマチ科や膠原病内科、血管外科と皮膚科が連携して治療にあたるケースも決して珍しくありません。そんな先端医療の現場で活躍してきた「せや皮膚科クリニック」の布施恵理先生によれば、「皮膚は内臓の鏡」。内臓疾患の症状が皮膚に表れるケースも多いとのこと。とはいえ、皮膚所見の見極めは非常に難しく、皮膚科を専門とする医師の協力を仰ぎたいと語る「田川クリニック」の副院長・田川徹平。そんな田川のたっての思いのもと実現した今回の対談企画。皮膚科と内科、それぞれの立場から患者のための最適な治療をめざすお2人にクリニックならではのきめ細やかな対応や生活習慣病予防の取り組みについて、熱く語っていただきました。(対談日2023年2月22日)

  • 田川先生田川クリニック
    副院長 田川徹平
  • 布施先生せや皮膚科クリニック
    院長 布施恵理先生

設備も人も、大学病院レベルの医療を身近なクリニックで提供

まずは今回の対談に布施先生を選ばれた理由をおしえてください。

内科の診察をしていると、皮膚トラブルの訴えってすごく多いんです。そこでぜひ皮膚科専門の先生にお話をお伺いしたいと思い、うちのスタッフに聞いてみたところ、全員が「せや皮膚科クリニック」に通っているとのこと。これはもう布施先生にお話を伺うしかないと思い、今回の対談を企画しました。
ありがとうございます。私は聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院(以下、西部病院)に長くいたのですが、患者さんが非常に多く、中には大学病院で診るほどではない方も少なからずいらしたので、「これは近所の皮膚科で診てもらえますよ」とお伝えしたところ、「近所に皮膚科がありません」と。調べてみたら、瀬谷には本当に皮膚科がなくて、それなら私がと2014年に瀬谷駅から徒歩1分の場所に「せや皮膚科クリニック」を開院しました。生まれたばかりの新生児にも対応可能なクリニックとして、赤ちゃんから高齢の方まで幅広い年齢層の患者さんにご利用いただいています。

大学病院と連携しながら地域医療に貢献されているのですね。

開業にあたっては、これまで大学病院でしか受けられなかった治療を身近に受けられるクリニックにしたいという思いがありました。大学病院には大学病院の、クリニックにはクリニックの役割があるので、大学病院と連携しながら患者さんが最適な治療を受けられるよう心がけています。私は西部病院に知り合いの先生が多く、良い形で連携できている方だと思いますが、このような企画を通じて地元のクリニックとの連携を深めていけることは大変心強いですね。
このあたりには大学病院といえば西部病院くらいしかないので、どうしても患者さんが集中してしまいます。それで大学病院がキャパシティオーバーになってしまい、本来大学病院で治療を受けるべき患者さんが治療を受けられなくなってしまったら、本末転倒です。例えばがんの手術を受けるとなれば大学病院でなければ対応できませんが、ちょっとした腹痛や検査だったらクリニックでも十分対応できます。大学病院でしか診ることのできない患者さんを確実に大学病院に集め、そうでない患者さんを地域のクリニックで診るようできれば、地域のみんなのためになるはずです。しかもクリニックで大学病院レベルの医療が受けられるとなれば、わざわざ休みをとって大学病院に行かずに済むので、患者さんにとっても大きなメリットとなるのではないでしょうか。

お二人ともクリニックながら
非常に精度の高い検査や治療に対応されていると高く評価されていますね。

当院では全身型と部分型の2つの紫外線治療器を導入し、尋常性乾癬、アトピー性皮膚炎、尋常性白斑、掌蹠膿疱症など治療に効果をあげています。保険適用でアトピー性皮膚炎などのかゆみが抑えられることや、全身型だと数分で治療が終わることから、お子さんや高齢の患者さんに大変喜ばれています。円形脱毛症の治療にも効果があり、個人差はありますが、うっすら産毛が生えてきた時は私も嬉しいですね。また、副作用の少ない先端の生物学的製剤もいち早く導入しました。これまでの治療で十分な効果が得られなかった中等症以上のアトピー性皮膚炎の患者さんに対して、高い改善効果と安全性が確認されているお薬です。以前は大きな病院でしか受けられなかった治療をクリニックでも受けられるようにすることで、慢性疾患でつらい思いをしている患者さんを少しでも早く笑顔にできればと思っています。
人間ドックをフルコースで受けると10万円くらいかかりますが、特定健診とがん検診を組み合わせるとかなり安く済みます。さらに町のクリニックが質の高い検査をして高度な治療が必要な人だけを大学病院に送るようにすれば、大学病院の負担も減り、必然的に地域の医療レベルも上がります。私は大学病院や国立がん研究センター中央病院に長く勤務していたこともあり、どうしても検査の質を落としたくなかったので、クリニックにも専門医療機関と同レベルの内視鏡を導入しました。小さな病変を見逃さずに発見し、早期治療に結びつけることができれば、がんは完治が望める時代です。クリニックでも大学病院レベルの精度の高い検査が受けられることをもっと多くの方に知っていただき、がん検診の受診率の向上につなげていきたいですね。

皮膚科は内臓の鏡。
内臓疾患が皮膚に表れることもあるので注意が必要

  • 田川先生
  • 布施先生

皮膚は全身疾患とも大きな関わりがあるそうですね。

皮膚は人間の体全体を覆う人体最大の臓器で、細菌やウィルスなどへの感染、紫外線刺激などから人体を守るだけでなく、身体内部のさまざまな病気が皮膚の変化として現れることも多く、「皮膚は全身の鏡」「皮膚は内臓の鏡」とも言われています。大学病院時代は血管外科や整形外科、膠原病科の先生との連携しながらの治療は日常的でした。開業してからは、患者さん自身も気づいていない乾癬性関節炎を合併している方が意外に多いことに驚いています。当院では、乾癬などが重症化して関節が変形してしまう前に適切な治療につなげることができるよう、皮膚だけを診るのではなく、関節の痛みなどほかの症状がないか丁寧な診察を心がけています。

時間をかけて丁寧な診察ができるのはかかりつけ医ならではの強みですね。

西部病院はとにかく患者さんが多いので、物理的に一人ひとりの患者さんにそんなに時間をかけられないので、そこは開業医の頑張りどころではないかと感じています。皮膚科の患者さんは長いお付き合いになることが多く、当院ではただお薬を渡すだけでなく、経過を詳しく聞くようにしています。実際に薬を使ってみて効果がなかったのか、実は薬を塗り忘れていただけなのかによってその後の治療が変わってくるので、そこは正直に報告していただけるとありがたいですね。
残薬の確認は大切ですね。ご家族と同居されている方ならご家族に確認できるのですが、高齢の一人暮らしの方の場合、残薬の把握ができていないことが多く、薬の管理の難しさを痛感しています。うちの場合、父の代からずっと家族で通い続けてくださる患者さんが多いので、この患者さんのことは娘さんに聞けばいいとか、ある程度家族背景を踏まえて治療方針と立てられる点は、まさにかかりつけ医ならではの強みだと感じますね。

診察の結果、思わぬ病気が見つかることもあるそうですね。

毛嚢(もうのう)炎といって、毛の根元に吹き出物のようなものが全身にできた患者さんがいらした時、詳しくお話を伺ったら健診等は受けたことがないとのこと。30代の方でしたが、気になるので念のため血液検査をしたら糖尿病でした。すぐに専門の先生に診てもらうようお伝えしたのですが、ご本人もまさか皮膚科に来て糖尿病と言われるとは思っていなかったようで、大変驚いていらっしゃいました。皮膚のトラブルは体からの危険信号です。皮膚からの情報を見逃さないよう注意深く診療しています。
便秘が原因で肌荒れを起こすケースもありますね。当院では、まず便秘の原因を調べ、必要に応じて適切な治療を行います。今、便秘のガイドラインでは刺激性の便秘薬はできるだけ使わないことになっているのですが、自己流で市販薬に頼っている方の中には、こうした最新情報を知らないまま、効かないからと市販薬の量がどんどん増えていき、1箱を2日で飲んでしまう方もいます。このようなことを続けていると、腸の働きが落ちて腸閉塞になってしまい、最悪、手術で腸を切除することもあります。たかが便秘と思われるかもしれませんが、腸閉塞になるリスクや大腸がんが隠れているリスクもあるので、安易に市販薬に頼らず、1度消化器内科で検査してもらうことをおすすめします。

かかりつけ医ならではの
きめ細やかなフォローで生活習慣病を予防

田川先生と布施先生

食生活の改善やアドバイスにも力を入れていると伺いました。

40~50代を過ぎると健康診断でなんらかの異常を指摘される方が増えてきます。高血圧や高コレステロールなどの薬を飲むよう指導されると、多くの方が一生薬を飲み続けなくてはならないと思われるようですが、食生活の改善など生活習慣を改めることで薬を減らすことは可能です。当院では5名の管理栄養士を置き、食生活のアドバイスに力を入れています。かかりつけ医の強みは、患者さんの家族背景を考慮しながら、実際に食事を作る方に直接指導できること。いきなりあれもこれもと指導するのではなく、確実にできそうなことからスタートし、小さな成功体験を重ねながら、食生活を改善していけるよう取り組んでいます。
最近、学会で乾癬の患者さんの肥満を解消したら乾癬の皮疹がよくなったという報告が増えてきています。当院でも栄養カウンセリングのパンフレットを使いながら、食生活の大切さを訴えています。また、少しでもよくなればと、高齢の患者さんの中には受診のたびに体重を計っていただくようにして、「〇〇さん、効果が出てきていますね、この調子で頑張りましょう!」と、励ましながら、適切な食生活を維持できるよう工夫している方もいます。ただ、それ以上は踏み込めずどうしたらいいか模索していました。これからは、食生活についてはそちらで管理栄養士の指導を受けてもらうようにすれば安心ですよね。なんせ当院から田川クリニックまで歩いて7分の距離なので、行くだけでいい運動になりそうです(笑)。
便秘が原因で吹き出物ができてしまう患者さんもいるのですが、内科の治療や腸内環境の改善だけで解決できない時は、布施先生に診てもらうようにすれば患者さんも心強いですね。当院では糖尿病などの生活習慣病や、慢性的な便秘や下痢の患者さんへの食事指導については3年前から管理栄養士にお願いしているのですが、「おやつが必要なのは3歳まで」「チョコレートは脂肪と砂糖の塊」といった言葉を毎日のように聞いてていると、私も自然とお菓子類に手を出さなくなり、気づいたら5kgやせていました。生活習慣の改善とはまさに日々の積み重ね。継続的に正しい情報をインプットしながら生活を見直すという意味でも、管理栄養士による指導は大きな意味があると身をもって痛感しています。食事を改善するだけで薬の量が減らせる、あるいは薬に頼らずにすむようになることは、患者さんにとっても大きなメリットですよね。

クリニックならではのチーム連携も素晴らしいですね。

当院ではスタッフ全員が受付も助手も交代で行う体制をとっています。患者さんについての情報を共有し、全員でサポートできればという思いから始めたことですが、今では誰もが患者さんの症状がわかるので自然と患者さんを思いやる声かけが出るようになったほか、受付でも患者さんの質問に的確にお答えできるようになりました。開院以来、「患者さんのためになることをしよう」を合言葉にみんなで頑張ってきましたが、最近は「ここへ来ると安心する」と喜んでくださる患者さんも増え、私たちも嬉しいですね。
当院では管理栄養士がメディカルクラークとして私の診察に同席し、患者さんの状況を把握した上で栄養カウンセリングを行う体制をとっています。カルテを書くのもお任せしているので、私は患者さんとしっかり向き合うことができるし、彼女らも経過観察をしながら栄養カウンセリングができるので、一人ひとりの患者さんに合うより適切なアドバイスにつながっているのではないでしょうか。さらに私はカルテを書かずに済むので効率よく診察できるようになり、待ち時間の短縮にもつながっています。今後、もう一人管理栄養士を増やし、さらに体制を充実させていく予定です。

最後にかかりつけ医としての思いと読者へのメッセージをお願いします。

私の専門は内視鏡検査ですが、それだけだとがんの早期発見はできても、予防はできません。じゃあどうすればいいだろうと考えて始めたのが、栄養カウンセリングです。食生活を改善することで生活習慣病を予防することができれば、がんや脳卒中、心筋梗塞などのリスクを下げられます。家族背景などに配慮したそのかただけの「オーダーメイド」の栄養カウンセリングができるのは、まさにかかりつけ医ならではの強みだと思います。また、町医者は受診のハードルが低いことも強みです。生活習慣レベルのことでも早めに介入することで、病気の発症を防げる可能性が上がります。自分の健康状態を確認し、必要なメンテナンスを受けるつもりで気軽に足をお運びください。
当院は保険診療をメインに行っているので、水虫の薬1つとっても国からお金をもらって治療しているわけですから、ただ薬を出すだけではなく、きちんと治さなければという責任感をもちながら治療にあたっています。皮膚科は治療に時間のかかる疾患が多いのですが、「今のつらい症状は絶対によくなるから、一緒にがんばりましょう」「漠然と薬をもらいに来るだけじゃダメですよ、本気で治そうと思ってくださいね」と声をかけ続けるようにしています。最初は、「こんなこと言われたのははじめてだ」と驚いていた患者さんも、ただ薬をもらうだけではなく、きちんと薬の用法を守ってはじめて治療を受けたことになることを理解していただけると、治療もスムーズですね。当院では皮膚トラブルにお悩みの方のメイクやスキンケアのアドバイスもしておりますので、どんな些細なことでも気軽にご相談くださいね。

取材を終えて

「大学病院レベルの医療を身近なクリニックで」という共通の思いのもと、精度の高い検査や高度な医療の提供をめざす田川先生と布施先生。大学病院レベルの医療を提供する先生方が、「ご近所同士」という地の利を生かし連携を深めることで、瀬谷エリアの医療が確実にレベルアップしたと思います。また、特になにもしていないのに5kg痩せたという田川先生の言葉に一同びっくり。栄養カウンセリング(食生活の改善)の大切さとその効果を肌で感じることができました。

田川先生と布施先生

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