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「頼れる瀬谷のお医者さん」シリーズ第5弾
<消化器内科医と婦人科医による対談>|
横浜市瀬谷区の田川クリニック

Interview

若い頃は生理痛や月経困難症に悩み、閉経後はさまざまな更年期症状に悩むなど、女性の生涯は女性ホルモンに大きく左右されるといっても過言ではありません。では実際に女性ホルモンの乱れがどのような影響を及ぼすのでしょうか。男性であり、内科医という立場から「田川クリニック」の副院長・田川徹平が、女性のためのクリニック「みなウィメンズクリニック」の院長、宅島美奈先生に素朴な疑問をぶつけた今回の対談企画。立場は違っても、患者を想う真摯な姿勢は同じ。そんな2人の取り組みについて、地元への想いを交えながらじっくりお聞きしました。(対談日 2022年8月15日)

  • 田川先生田川クリニック
    副院長 田川徹平
  • 黒木先生みなウィメンズクリニック
    院長 宅島美奈先生

つらい経験をいかし、女性の体をトータルに診れる
女性のためのクリニックを開院

まずは宅島美奈先生の紹介と、今回の企画の意図をお願いします。

私は消化器を専門に診ていますが、男性の患者さんなら、お腹だけでなく、膀胱炎や尿管結石症、場合によっては前立腺など大体診ることができます。ところが女性の場合、内視鏡で胃や腸を診ることはできても、卵巣や子宮を診ることはできないし、乳がんと子宮がんは検査自体ができません。じゃあ、女性の患者さんをどこへ紹介すればいいだろう?となった時に、真っ先に思い浮かんだのが宅島先生でした。瀬谷区の休日診療の当直でご一緒した時にとても話しやすい先生だなと思って以来、ずっと今日の対談を楽しみにしていました。
ありがとうございます。私も何人もの患者さんから、「田川先生はよく話を聞いてくれる良い先生だ」とお聞きしていたので、自分がかかる時は田川先生にしようって思っていました。いざ、自分が具合悪くなった時、どの病院にかかったらいいか困ってしまうのは患者さんだけでなく医師も同じなので、他の先生との対談も興味深く読ませていただきました。

「みなウィメンズクリニック」は婦人科だけでなく、
女性内科や乳腺外科も診てもらえることから、多くの信頼を集めていますね。

もともと私は心臓血管外科が専門で、当時勤務していた日本医科大学第二病院では、呼吸器外科や乳腺外科も担当していました。毎日のように手術があり、時には10時間を超えるような手術の後に術後管理や外来、検査をすることもあって、ついに体を壊してしまいました。それを機に乳腺外科にフィールドを移し、自分自身が心身ともにボロボロになった経験から、乳腺外科だけでなく女性特有の婦人科疾患から内科、漢方まで、女性のさまざまな悩みに幅広く対応できる医療を提供したいと思うようになり、2014年に開業しました。駅から離れた住宅街にあるのですが、10台分の駐車場があることから「車の方が通いやすい」と好評です。瀬谷区だけでなく、藤沢市や絢瀬市などから通ってくださる患者さんも多いですね。

女性の心と体に大きな影響を及ぼす
女性ホルモンと上手く向き合うことが大切

  • 田川先生
  • 宅島先生

それぞれ、内科や婦人科を紹介したいと思うのはどのような時でしょうか?

「なんとなくお腹が痛い」という時や、便秘や下痢が続く時、女性の患者さんの場合、内科だけでは原因がわからないことがあるんです。そういう時、婦人科で女性疾患の可能性があるかどうかを診断していただけると、ありがたいですね。消化器科と婦人科、泌尿器科をそれぞれ総合病院で診てもらったら、かなり時間がかかってしまいますが、地域のクリニック同士で連携して診療すれば一気に解決できるかもしれません。今はクリニックでも大学病院レベルの検査ができるところも珍しくありませんしね。
最近、排便時に出血するといって受診される方が何人かいて、患者さん自身もおしり(肛門)からの出血なのか女性器からの出血なのかよくわかっていないようでした。そんな時は、内科で大腸検査を受けてもらえると安心ですね。医師は自分の専門分野の中から消去法で原因を絞り込んでいくので、自分の専門外のことは、その分野の専門の先生にお任せした方が、より早く確実に原因を突き止められると思います。

女性ホルモンは女性の体にさまざまな影響を及ぼすのですね。

女性ホルモンの分泌量をつかさどっているのは、脳の視床下部というところです。視床下部は自律神経を司る場所でもあることから、女性ホルモンと自律神経はお互いに影響を受けやすい関係にあります。特に更年期になって卵巣の機能が低下すると女性ホルモンのバランスが崩れ、心身にさまざまな不調が表れます。わかりやすいのはホットフラッシュといわれる体のほてりですが、他にもめまいや動悸、頭痛、肩こり、関節痛、しびれ、息苦しさ、胃腸の不調、便秘、下痢などの身体的症状や、憂うつな気分、イライラ感、集中力や意欲の低下などの精神的症状がみられます。
自律神経の働きは女性ホルモンと大きく関係しているので、生理の時に便秘になる方は非常に多いですね。日常生活に影響が出てくるほど酷い便秘の原因が機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)や過敏性腸症候群などだったら内科で対応できますが、生理が原因だったら、女性ホルモンをコントロールしてもらわないと根本的治療にはなりません。
女性は環境の変化や体調不良、ストレス、激しいダイエットなどによって月経不順になることもあり、若い方でも生理痛や月経前症候群(PMS)に加え、更年期と同じような症状に悩む方も少なくありません。症状の表れ方には個人差がありますが、年齢を問わずこれらの症状でつらいと感じた時は、我慢せず気軽に婦人科にご相談いただければと思います。

受診のハードルが高いと感じる女性へのアドバイスをいただけますか?

よくお問い合わせ頂く内容ですが、生理の時でも、内科の受診や内視鏡検査にはなんの影響もないということをお伝えしたいですね。時に生理不順の方の場合、せっかく内視鏡検査の予約をとって仕事まで休んだのに、生理になったからといって予約をキャンセルするなんて、手間と時間がもったいないじゃないですか。医師は生理でもまったく気にしませんし、むしろ早く治療を始めた方がいいケースの場合、病気の早期発見の機会を失うことのデメリットははかりしれません。気になる症状のある時や検査の予約をした時は、生理になってしまっても安心して受診してほしいですね。
内診台があるから婦人科に行きたくないという方は本当に多いですね。患者さん本人だけでなく、娘さんに付き添ってくるお母さんや、妊娠や出産を経験した50代、60代という方たちも嫌がります。成人の女性の場合は、なぜその検査が必要なのかを説明して、納得していただくよう心がけていますが、当院ではまだ十代の、それこそ小学生や中学生には基本的に内診台に上がってもらうような診療はしません。まずそのことを知っていただきたいですね。あと、検査の日はスカートで来られるといろいろスムーズだと思います。
経腟エコーって内診台に上がらないとできないですよね?卵巣や子宮って、腹部エコー(お腹の上から)でも診れるものなんですか?
お腹の上からはちょっと厳しいですね。なので、経腟が厳しい場合は肛門からプロープを入れることもありますが、それだって嫌ですよね。おそらく生理痛だろうなとは思うのですが、万一怖い病気だったら困るからなんとか検査してほしいと言われることもあります。「ちょっと大ごとになっちゃうけど、MRI検査を受けてみますか?」と聞いたら、「寝ているだけで済むのでありがたい」と言われたこともあります。MRIの結果、何もなければ、「安心できてよかった」と喜んで帰られるので、そういうのもありなのかなと思います。実は私、今年の春に胃の調子が悪くなった時、迷わず田川先生にお願いしました。実際、自分も検査を受けてみて、噂通りよく話を聞いてくれる良い先生だなと思ったし、何より寝ている間に胃の内視鏡検査を受けられたのが本当によかったです。
その節はありがとうございました(笑)。私は卵巣や子宮をしっかり診るなら経腟エコーしかないだろうと思っていたので、必要があれば迷わず患者さんに薦めていたのですが、女性の医師に診てもらう場合でも、患者さんにそんな葛藤があるとは思っていませんでした。

笑顔で過ごすために、検診で「大丈夫」を確認

  • 田川先生
  • 宅島先生

定期検診にはさまざまなメリットがあると聞きました。

定期的に検診を受けている患者さんだったら、ある日突然お腹が痛くなっても、「胃と大腸は大丈夫だろう」というように見当がつけられるので、余計な検査をすることなく患者さんに「大丈夫」と言えるんですよね。また、たとえ年に一度の定期検診だけでも行きつけのクリニックがあれば、会社の健診で再検査と言われた時にどこへ行けば悩まずに済むので、心理的にも受診しやすいと思います。
当院にも検査のついでに健診の結果が書かれた用紙を持ってきて、「先生、これはどういう意味ですか?」「どんな治療が必要なんですか?」と聞いてくる患者さんがいらっしゃいます。一度顔見知りになっておけば、何か疑問に思った時、気軽に尋ねられるので安心ですよね。また、婦人科のがん検診を1度受けた方は、翌年もまた来てくれることが多いですね。「今年も何もなくてよかったですね」と言えるのは、医師にとっても嬉しいことですね。
定期検査を、「大丈夫」ということを確認するために利用してもらえたら嬉しいですよね。横浜市は健診事業がとても充実していて、特定健診とがん検診を併せれば、5万~10万円くらいする人間ドックと同程度のことを調べられるんですよ。しかも横浜市の胃がん検診の胃カメラ検査では日本内視鏡学会認定の専門医が担当することになっているので、全国的にみてもかなり良い条件で検査が受けられるんです。これはもっと多くの方に知っていただきたいですね。

田川先生は、さまざまな形で情報発信をされていますね。

この対談企画もそうですが、少しでも多くの方に正しい情報を知っていただきたくて、Youtube配信も始めました。SNSも利用していますが、私自身、最近は動画で情報収集することが多いので、若い方たちに届くよう試行錯誤しているところです。
私はとてもそんなことはできないのですが、患者さんに病院を紹介する時にいつも苦労しているので、瀬谷区の病院マップのようなものがあるといいなと思っています。
それいいですね!例えばですけど、対談でつながったクリニックをマップ上に表示して、オンラインでも印刷した状態でも活用できるようにすれば、患者さんにも喜ばれそうですね。動画とリンクすれば、受診する前にどんな感じの先生なのかもわかるようになりますね。そもそもこの対談を始めたのも、糖尿病の患者さんに何度も眼科に行くよう言っても受診してもらえなくて、「こういう先生だから行ってみて」と安心させたいと思ったことがきっかけの1つだったんです。

最後に瀬谷への想いと地域のみなさんへのメッセージをお願いします。

当院では受付までスタッフはすべて女性で、患者さんに「ここへ来てよかった」と安心していただける対応を心がけています。瀬谷は私にとって生まれ育った町なので、自分を育ててくれた町や地域の方に少しでも恩返しできればという気持ちでやっています。婦人科はデリケートな問題を扱うことが多いので、患者さんの気持ちに寄り添いつつ、少しでも体と心の調子がよくなるようお手伝いができればと考えています。お困りごとがあればお気軽にご相談ください。
私は院長である父から引き継ぐ形で、こちらで診療することになりました。院長は地域の方々への思い入れが強い人なので、私自身も地域の皆さんに喜んでいただけるクリニックにしたいと思い、スタッフの教育からはじまり、院内のリフォームまでいろいろ取り組んできました。内科の立場で地域貢献について考えた時、「健康寿命を延ばす」ということが真っ先に思い浮かびました。今はがんも早期発見できれば治る病気です。人生100年時代。ただ、長生きするだけではなく、健康な状態で長生きしていただきたいと切実に思います。そのためにも、1人でも多くの方に健診(検診)を受けていただき、成人病やがんの予防と早期発見で、瀬谷を元気な町にしていければと思っています。大きな病院とちがって、クリニックはいつでも気軽に相談できる場所ですので、町のかかりつけ医として活用していただければと思います。

取材を終えて

穏やかな口調と優しい笑顔で話される宅島先生。自分が体を壊して辛い想いをした経験から、患者の気持ちに寄り添い、安心してもらえる女性のためのクリニックづくりに力を入れているという真摯な姿勢が言葉の端々から伝わってきました。また、診療でお忙しい中、動画配信など新たなコンテンツにも挑戦するなど、田川先生の日々の努力もあり、同院で内視鏡検査を受けたいという問い合わせもかなり増えてきているとのこと。若いうちは「健康だから医者知らず」でいいと思いがちですが、年齢を問わず「健康でいるために」クリニックを活用するべきだということを痛感しました。内視鏡のエキスパートである田川先生と、横浜市でも数少ない乳腺外科に精通した宅島先生のように、近所のクリニックで大学病院並みに精度の高い検診が受ければ、、移動時間も待ち時間も少なくて済むのでとてもありがたいと思いました。

田川先生と宅島先生

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