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甲状腺機能低下症

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甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症(橋本病)とは?

甲状腺機能低下症とは、のどぼとけの下にある「甲状腺」の働きが低下し、全身の代謝を調整する甲状腺ホルモンの分泌が不足している状態を指します。

この甲状腺機能低下症の最も代表的な原因が、橋本病(慢性甲状腺炎)です。橋本病は、日本の外科医である橋本策(はしもと はかる)博士によって世界で初めて報告された疾患で、自己免疫の異常によって甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気です。

橋本病は比較的頻度の高い疾患で、成人女性では10〜20人に1人程度にみられるとされています。
ただし、橋本病と診断された場合でも、すべての方が甲状腺機能低下症になるわけではありません。

実際には、橋本病の方のうち甲状腺ホルモンが不足し治療が必要となるのは約3割程度で、残りの約7割の方は甲状腺機能が正常に保たれたまま経過します。

そのため、橋本病と診断された場合でも、定期的な検査で甲状腺機能の状態を確認しながら経過をみていくことが重要です。

橋本病の原因は「自己免疫の異常」

橋本病は「自己免疫疾患」の一つに分類されます。私たちの体には、本来、外から侵入してきたウイルスや細菌などの異物を攻撃して排除する「免疫」という防御システムが備わっています。しかし、何らかの理由でこの免疫システムに異常が生じてしまうと、自分自身の正常な細胞や組織を「異物」と勘違いして攻撃してしまうことがあります。

橋本病の場合、免疫システムが自分自身の甲状腺を標的とする「自己抗体(抗サイログロブリン抗体や抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)」を作り出してしまい、この自己抗体が甲状腺を攻撃し続けることで、甲状腺に慢性的な炎症(慢性甲状腺炎)が引き起こされます。

炎症が長く続いていくと、甲状腺の組織が少しずつ壊されて萎縮し、最終的に甲状腺ホルモンを作り出す能力が低下してしまいます。遺伝的な体質に加えて、強いストレスや妊娠・出産、過剰なヨード(ヨウ素)の摂取などが発症や悪化のきっかけになると考えられています。

甲状腺機能低下症(橋本病)の主な症状

甲状腺ホルモンは全身の細胞の働きを活発にし、新陳代謝を促す「体のアクセル」のような役割を担っています。そのため、甲状腺ホルモンが不足すると身体の多くの機能が低下し、さまざまな不調として現れます。

全身の症状

  • 無気力、疲れやすい、だるい
  • 寒がりになる
  • 体重増加(食べていないのに太りやすくなる)
  • 体温が低い

皮膚・見た目の症状

  • 顔や手足、全身のむくみ
    ※甲状腺機能低下症のむくみは「押してもへこみにくい」のが特徴
  • 皮膚が乾燥する
  • 抜け毛が増える
  • 声がかすれる

消化器・循環器系の症状

  • 便秘
  • 脈が遅くなる(徐脈)

精神・神経の症状

  • 記憶力・集中力の低下
  • 強い眠気
  • 気分の落ち込み、うつ状態

女性特有の症状

  • 月経異常(過多月経、不順など)

首まわりの症状

  • 甲状腺全体が腫れる(甲状腺腫大)
  • のどの圧迫感や違和感

これらの症状は、

  • 加齢
  • 更年期障害
  • うつ病
  • 慢性的な疲労

などと非常によく似ています。

そのため、「年齢のせい」「そのうち治る」と自己判断されてしまい、受診が遅れることも珍しくありません。

不調が長く続く方は、甲状腺ホルモンの検査で原因がはっきりすることがあります。
気になる症状があれば、早めの検査をおすすめします。

甲状腺機能低下症(橋本病)と妊娠の関係

甲状腺ホルモンは、お母さんの体調だけでなく、赤ちゃんの発育にも重要な役割を担っています。特に妊娠初期は、赤ちゃん自身が十分に甲状腺ホルモンを作れないため、お母さんのホルモンに大きく依存しています。

妊娠への影響

甲状腺機能低下症が十分にコントロールされていない場合、以下のようなリスクが高まる可能性があります。

  • 流産・早産
  • 妊娠高血圧症候群
  • 貧血
  • 胎児発育遅延

また、赤ちゃんの脳や神経の発達にも影響を及ぼす可能性があるため、適切な管理が重要です。

妊娠中に注意すべきポイント

  1. 妊娠前・妊娠初期のチェックが重要
    妊娠を希望される方や妊娠初期には、TSH・FT4などの検査で甲状腺機能を確認することが推奨されます。
  2. 妊娠中はホルモン需要が増える
    妊娠すると甲状腺ホルモンの必要量が増えるため、すでに治療中の方でも薬の量を増やす必要がある場合があります。
  3. 定期的な採血フォロー
    妊娠中は4〜6週間ごとの血液検査を目安に、甲状腺機能を細かくチェックしていきます。

橋本病の検査・診断方法

橋本病や甲状腺機能低下症の診断には、主に 「血液検査」「甲状腺超音波(エコー)検査」 の2つを組み合わせて行います。いずれも身体への負担が少なく、短時間で行える検査です。

1血液検査
(ホルモン・自己抗体の
チェック)

甲状腺ホルモン

  • FT3(遊離トリヨードサイロニン)
  • FT4(遊離サイロキシン)

甲状腺ホルモンが不足している場合、FT3・FT4は低下します。

TSH(甲状腺刺激ホルモン)

脳の下垂体から分泌され、甲状腺に「ホルモンを出して」と指示を送るホルモンです。
甲状腺ホルモンが不足すると、TSHは増加します。

自己抗体(橋本病の確認)

橋本病は自己免疫の異常によって起こるため、以下の抗体を測定します。

  • TPO抗体(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)
  • Tg抗体(抗サイログロブリン抗体)

これらの抗体が陽性であれば、橋本病による炎症が関与している可能性が高くなります。

2甲状腺超音波
(エコー)検査

超音波プローブを首元に当てて、甲状腺の形や内部の性状を調べる検査です。

エコーで分かること

  • 甲状腺の大きさ
  • 腫れの有無
  • 内部の組織(エコー輝度)の状態
  • 結節(しこり)の有無

橋本病の方では、

  • 甲状腺が全体的に腫れる
  • 内部がざらざら・粗く見える(低エコー)

など、特徴的な画像所見が見られることがあります。

痛みや被ばくの心配がなく、お身体への負担が少ない検査です。

甲状腺機能低下症(橋本病)の治療と日常生活の注意点

お薬による治療(甲状腺ホルモン補充療法)

橋本病と診断されても、甲状腺ホルモンが十分に分泌されている場合は、すぐに治療を始める必要はありません。
定期的に血液検査やエコー検査を行い、甲状腺の働きが低下していないかを丁寧に確認していきます。

一方、甲状腺機能低下症を発症している場合は、不足しているホルモンを補うために「甲状腺ホルモン補充療法」(レボチロキシンの内服)を行います。

甲状腺ホルモン補充療法の特徴

  • 体内の甲状腺ホルモンと同じ成分のため、副作用は非常に少ない治療です
  • 少量から開始し、血液検査の結果を見ながら適切な量に調整していきます
  • 適量が見つかれば、1〜2ヶ月ほどで症状が改善し、以前と同じように日常生活を送ることができます
  • 自己判断でお薬を中断すると再びホルモンが不足して症状が悪化することがあるため、医師の指示に従って継続することが大切です

日常生活の注意点(ヨードの過剰摂取)

甲状腺ホルモンの原料となる「ヨード(ヨウ素)」は、海藻類(特に昆布)に多く含まれています。
必要量であれば問題ありませんが、過剰に摂取すると甲状腺の働きを弱め、機能低下を悪化させてしまうことがあります。

過剰摂取につながりやすいもの

  • 昆布だしを日常的に大量に摂る
  • 昆布茶やとろろ昆布の大量摂取
  • ヨード系のうがい薬を頻繁に使用する
  • サプリメントの過剰摂取(ヨード含有のもの)

普段の食事で海藻を適量食べる分には問題ありませんので、“控えめ”を意識する程度で十分です。
ご自身の食生活について心配な場合は、診察時にお気軽にご相談ください。

横浜市で甲状腺の不調にお悩みなら当院へ

甲状腺機能低下症(橋本病)は、早期に発見し、適切にお薬でコントロールすることで、健康な方と変わらない日常生活を送ることができる病気です。

  • 「最近ずっと疲れが抜けない」
  • 「更年期かと思ったけれど、どうも違う気がする」

こうした不調は、体が発しているSOSサインかもしれません。

症状はゆっくり進行するため気づきにくいことも多く、自己判断で放置してしまうケースが少なくありません。気になる症状がある場合は、早めに専門的な検査を受けることが大切です。

当院では、横浜市・瀬谷区を中心に、地域の皆様の甲状腺疾患の診療に力を入れています。
甲状腺の病気は、専門的な知識に基づく正確な診断 と、継続的なフォロー がとても重要です。

  • 甲状腺の病気が心配
  • 検診で異常を指摘された
  • 他院で経過観察中だが不安がある
  • なんとなく体調がすぐれない原因を知りたい

このようなお悩みも、お一人で抱え込む必要はありません。

当院では、丁寧な問診と血液検査・超音波検査を組み合わせ、患者様一人ひとりに合わせた最適な治療をご提案いたします。
「受診してよかった」と思っていただけるよう、分かりやすい説明と寄り添った診療を心がけています。